インフォグラフィックの真髄。Harry Beck氏の路線図デザイン

インフォグラフィックをデザインする際、余分な要素を入れないように気をつける必要があります。

一番伝えたいことに関係が薄い情報を見極めて取り除いていきます。
このプロセスは、遺跡発掘において、ハケを使って、塵を慎重に取り除く姿に近いです。

掘り当てるものが何なのか、インフォグラフィック・デザインにおいては、「なにを伝えるものなのか」が明確でないと、余分な要素を取り除く作業は難航します。

ここで成功例をひとつ挙げます。

ロンドン地下鉄路線図(1908年)

ロンドン地下鉄路線図 1908年 1

ロンドン地下鉄路線図 1908年 2

もともとロンドンの地下鉄路線図は、通常の地図をベースに、路線を描き入れたデザインでした。

道や公園、建物も描き込まれていて、目的駅までの経路や乗り継ぎ情報が簡単には参照できません。
ロンドンの人ならまだしも、旅行者からするとなおのことです。

この問題を解決したのが、Harry Beck(ハリー・ベック)氏が1931年にデザインした地下鉄路線図です。

ロンドン地下鉄路線図(1931年)

ロンドン地下鉄路線図 1931年

路線以外の地上物は、テムズ川だけを残しました。
路線も複雑なカーブをやめて単純な表現にしています。

路線図は「目的地への行き方」を伝えるものとして、余分な要素を取り除きました。

最新のロンドン地下鉄路線図は、Harry Beck氏デザインではありませんが、その右下隅にはつぎのように記載があります。

This diagram is an evolution of the original design concelved in 1931 by Harry Beck

ロンドン 地下鉄路線図 2013年 1

路線図は元素周期表と並び、インフォグラフィックの象徴的な存在で、デザインの再考や、路線図のデザイン・コンセプトを使って別の内容を示す試みがなされています。

路線図デザイン再考の例

書籍「ビューティフルビジュアライゼーション」の中で、Eddie Jabbour氏がニューヨークの路線図を見直す過程を書いています。

左がもともとの路線図で、右がEddie Jabbour氏がリ・デザインした路線図です。

ニューヨーク 路線図 kickmap
image by Kickmap

Eddie Jabbour氏の考えた路線図は、「KickMap」というアプリでリリースされています。

このアプリは、深夜帯に立ち上げると、その時間に運行している路線だけが表示されるという特徴があります。

ほかには、Max Roberts氏が考えたグリッドを使わない路線図デザインが、Co.Designで取り上げられていました。

Max Roberts 地下鉄路線図 環状
image by Co.Design

路線図のデザイン・コンセプトを使った例

グーグルが買収したサービスを、路線色で分類してまとめています。

google 買収 メトロマップ
image by Ripetungi

ほかの事例では、
英バンド「ザ・スミス」トリビュート路線図インフォグラフィック・アート
系統ごとにおすすめを紹介できるインフォグラフィック「ROCK ‘N’ ROLL METRO MAP」

記事に関係する本

プロフィール

櫻田潤
櫻田 潤(さくらだ・じゅん)

プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナーを経て、2010年よりビジュアルシンキングを運営。あわせて、インフォグラフィックのデザインも始める。2014年、NewsPicksにインフォグラフィック・エディターとして参画。ビジュアルを用いた記事を多数、執筆デザイン。2017年よりNewsPicksのクリエイティブを統括。著書に『たのしい インフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』ほか。