センスを測るモノサシ(『センスは知識からはじまる』を読んで)

センスを測るモノサシ

はじめに

「センスがある」「センスがない」この評価の分岐点はクリエイターにとって重要です。一緒に仕事をする人から「センスがある」と感じてもらえている方がスムーズにコトが運びます。

でも「センス」は文字通り感覚的な言葉。何をもって「センス」と呼ぶのか、自分なりに答えをもっておきたい思い、ヒントを得るべく、水野学さんの著書『センスは知識からはじまる』を読みました。

センスは知識からはじまる 水野学

センスのいい人、悪い人

同じ水を出すのでも、センスのいい人は状況を考えて工夫し、センスの悪い人はそんなことを考えもせずに同じように出し続ける。こんなたとえが本に出ていました。絵にすると、つぎのイメージ。

センスは知識からはじまる センスのいい人 悪い人

本書に出てくるこのたとえを読んで、石田三成と秀吉のエピソードを思い出しました(実話じゃないとする説もあるらしいですが)。

ある時、のどが渇いた秀吉がお寺に寄って、お茶を所望しました。その時、お寺で寺小姓をしていた三成は、三杯のお茶をつぎのように出し分けました。

三成 秀吉 三献の茶

一杯目でまずは喉を潤してもらい、だんだんとじっくり飲ませるように工夫したという話で、秀吉は三成を気に入り、家臣に加えたそうです。

「センスのよさ」とは、数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力である。(『センスは知識からはじまる』より)

センスがいい人は、同じ「水を出す」「お茶を出す」のでも、漫然と行わないで、状況を見て最適化する。センスのいい人は、「こうすると良くなる」ということを知っている。

センスを測るモノサシ

では、センスのいい行動をとるためには何が必要か。「こうすると良くなる」と最適化するには、「ふつうの状態」と「もっといい状態」の差がわかっていなければできません。

センスは数値化できないので、この差を測るには、「いい」「悪い」の間にあるはずの「ふつう」を基準にします。

センスの測り方 普通定規

でも、基準となる「ふつう」を手に入れるにはどうしたらいいのか。「ふつうの水の出し方」はどんなか。「ふつうのデザイン」とは何か。「ふつうの企画」とはどんな企画か。

「センスがよくなりたいのなら、普通を知るほうがいい」と述べました。そして、普通を知る唯一の方法は、知識を得ることです。センスとは知識の集積である。これが僕の考えです。(『センスは知識からはじまる』より)

水野さんは、「ふつう」は過去の事例を知ることで学べるので、知識を蓄えることによって、わかるようになると説きます。

知識を得るコツ

本の中では、知識を得る3つのコツが解説されています。

知識習得 コツ センスは知識からはじまる

鍵は「普遍性」と「時代性」の組み合わせ。

いろんな選択肢をもつために、普遍的な知識を身につけておく。でもそれだけだと単なる「物知り」で終わってしまうので、何が時代を捉えているのかも知る。この両輪によって、最適化の幅が広がる。一番適した方法が選べる。

センスは知識からはじまる

おわりに

石田三成と秀吉の例を出しましたが、本には、千利休の話がでてきて、それもまた興味深いです。

安土桃山時代における千利休というのは今の時代でいうクリエイティブディレクターのようなものです。(『センスは知識からはじまる』より)

センスを求めた秀吉が、利休を重宝。

秀吉と利休の関係は、アップルにおけるスティーブ・ジョブズとジョナサン・アイヴの関係のようだったのかもしれませんね。石田三成や千利休のような末路は御免ですが、経営、ビジネスに「センス」をもたらす仕事に浪漫を感じます。

センスは知識からはじまる 水野学
図で考える。シンプルになる。 紹介

プロフィール

櫻田潤
櫻田 潤(さくらだ・じゅん)

プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナーを経て、2010年よりビジュアルシンキングを運営。あわせて、インフォグラフィックのデザインも始める。2014年、NewsPicksにインフォグラフィック・エディターとして参画。ビジュアルを用いた記事を多数、執筆デザイン。2017年よりNewsPicksのクリエイティブを統括。著書に『たのしい インフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』ほか。