【ドラッカー図解】イノベーションとイノベーションの目標

ドラッカー著『マネジメント【エッセンシャル版】』を図解するシリーズ。シリーズ目次はこちら

前回の記事では「マーケティングの目標」について図にしました。今回は「マーケティングの目標」と並んで目標設定の中心となる「イノベーションの目標」をまとめます。

まず、「イノベーション」とは何か、おさらいしたいと思います。

以前書いたこちらの記事では、「イノベーション」とは単なる技術的な発明ではなく、消費者の行動や社会そのものを変える価値を生むことだと紹介しました。

「イノベーションの目標」を考える上で、「イノベーション」とは何か、もう少し理解する必要があります。

ドラッカー著書ではありませんが、「ゴールは偶然の産物ではない〜FCバルセロナ流世界最強マネジメント〜」に「イノベーション」とは何か、その定義がわかりやすい例とあわせて載っています。

イノベーションには、何かの発明ではなくて、すでに発明された可能性のあるものを再発見することも含まれている。イノベーションは創造性以上のものであり、新しい物の見方で状況を解釈することである。
イノベーションとは、新製品を作ることではなく、新しい消費者ニーズを見つけ、それを満たすことだ。

図27: イノベーションの定義

ドラッカー「マネジメント」図解27

ではどのように「イノベーション」の糸口を見つけるか。それについては顧客の視点から物を見ることだとあります。

典型的な市場リサーチは、質と量に関するアンケート調査に基づくもので、イノベーションには何の役にも立たない。今の時代は、あらゆるものが大量に出回っているため、消費者にアッと言わせなければならない。もし誰かを驚かせたかったら、その人に「どうしたら驚くか?」と聞くのは明らかに愚問である。(中略)イノベーションのヒントは、顧客に「何が欲しいか」と尋ねても得ることはできない。それよりも顧客の購買活動や生活スタイルを観察し、顧客の身になって感じ、体験することが大切だ。いったん顧客の視点から物が見られるようになれば、イノベーションのヒントを得ることができるだろう。

「イノベーション」の例として「ゴールは偶然の産物ではない〜FCバルセロナ流世界最強マネジメント〜」で紹介されているのは、コロンブスのアメリカ大陸発見です。

確かにコロンブスの発見は、顧客にアンケート調査などしても決して生まれなかったでしょう。けれども、と言ってコロンブスがまったくのゼロから「イノベーション」を起こしたかと言うと、そういうわけではありません。

図28: コロンブスのイノベーション

ドラッカー「マネジメント」図解28

イノベーションとは発明ではない。コロンブスは何も発明しなかった。地球が丸いという説もすでに提唱されていたし、彼が利用した技術(帆船)も広く知られていた。

それから、大事なこととして次の教訓も引用しておきます。

ある1つのことを探しているときに別のものを発見することがある。コロンブスは、インド諸国に向かっているときにアメリカ大陸を発見した。最初の考えや目的に固執するあまり、他の可能性を発見するチャンスを逃してはいけない。

「ゴールは偶然の産物ではない〜FCバルセロナ流世界最強マネジメント〜」では、コロンブスの例のあと、アップルが例として登場します。

アップルもまた既存の技術を組み合わせて、「意識の変化」という機会をものにしました。これらの例から、イノベーションとは「機会」を見つけ、そこから生まれる「顧客」に対し、技術の組み合わせでリーチすることと言えるのではないでしょうか。

イノベーションを生む人とは、いちばん最初に何かをする人のことではなく、最初に消費者に到達することができて、しかもその商品が最高のソリューションだと消費者を説得できる先駆者のことである。

アップルにはスティーブ・ジョブズ氏がいます。この文章はまさにスティーブ・ジョブズ氏のことを指していると思いました。

図29: イノベーションの機会とリスク

ドラッカー「マネジメント」図解29

ドラッカーは、イノベーションには人口構造の変化といった予測可能な機会を狙ったものと、予測が難しい機会を狙ったものの2つがあり、後者はリスクが大きく、100件中99件が失敗に終わるようなもので、まずは前者に焦点を合わせた方がいいと述べています。

まず初めに、確率分布に載る種類のイノベーションに焦点を合わせ、それを利用するための戦略を持たなければならない。その過程において、例外的で真に偉大な歴史的イノベーションに対する感覚を育て、その種のイノベーションを早く認識し活用する体制をつくっておかなければならない。

「イノベーションの目標」を設定するには、その前に、リスクが大きい方を狙うのか、小さい方を狙うのかを確定させておく必要があると思います。それによって、成果をどれくらい期待するのか、目標設定の基準が大きく変わります。

また、「マーケティングの目標」にも出てきましたが、「イノベーション」においても「廃棄」すること、「集中」することは、早い段階で済ませておかなければなりません。

イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できる。

つづいて、ようやく「イノベーションの目標」についての図解です。

図30: イノベーションの目標

ドラッカー「マネジメント」図解30

「イノベーション」は新しい価値や市場を生み出すものです。

よって、まず社会に対して、どんな影響をどれだけ与えるか目標を定めてから、次の段階として、影響を与えるには、どんな製品・サービス、あるいはどんな流通経路が必要なのかといった実現のための目標を定める流れになると思います。

たとえばiPhoneはこれまでに数回、ハードとOSのバージョンアップをしていますが、最初の発表のときに、機能やデザインをどのレベルまで達成しておくかは、影響度の目標があってこそ決めることができたはずです。

反対に、影響度の目標が定まっていないまま、製品・サービスや流通経路の目標を考えた場合は、消費者が求めている以上の機能を追求してしまったり、目指すレベルが曖昧なため、いつまで経っても発表できないといった状態に陥ってしまう危険性があるのではないでしょうか。

次の記事:【ドラッカー図解】 経営資源の目標

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プロフィール

櫻田潤
櫻田 潤(さくらだ・じゅん)

プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナーを経て、2010年よりビジュアルシンキングを運営。あわせて、インフォグラフィックのデザインも始める。2014年、NewsPicksにインフォグラフィック・エディターとして参画。ビジュアルを用いた記事を多数、執筆デザイン。2017年よりNewsPicksのクリエイティブを統括。著書に『たのしい インフォグラフィック入門』『シンプル・ビジュアル・プレゼンテーション』