メンタル回復を早める方法(『オプションB』を読んで)

オプションB レジリエンス メンタル回復

はじめに

順風満帆に見える人、精神がタフに見える人、誰もが羨む生活に見える人。どんな人にも、うまくいかない時、まいってしまう時はある。

輝かしいキャリアに映るFacebook最高執行責任者シェリル・サンドバーグ──彼女にだってどん底は訪れる。新著『オプションB』には、突然ご主人を亡くした戸惑いと悲しみが綴られていました。

でもそこはシェリル・サンドバーグ。ただ苦しみを告白するだけじゃなくて、その状態からどう立ち直るかを学び、僕たちへのアドバイスに仕立てています。

オプションB シェリル・サンドバーグ

脱ネガティブ、3カ条

ネガティブな思考に陥った時、そこから脱するにはどうしたらよいか。

つらいできごとが「自分ひとりのせいではない、すべてではない、ずっとではない」ことに気づけば、子どもも大人も立ち直りが早くなることを、多くの研究が示している。(『オプションB』より)

立ち直りを邪魔する3つのワナから解放されることで回復が早まるそうです。

オプションB 脱ネガティブ3カ条 シェリル・サンドバーグ

自分一人のせいだと思わない

原因は他にもある。自分だけ悪いのだと自責の念にとらわれない。一人で解決できないこともある。

すべてダメだと思わない

悪いのは全体から見れば一部だけ。それがすべてに影響するわけではない。人生には他にいいことがある。

永遠に続くと思わない

悪い時期はいつか終わる。今の状況がずっと続くわけではない。時が経てば、絶望的な気持ちも薄れる。

これら3カ条を頭でわかっていても、混乱している時は状況の切り分けよりも、まずは心を鎮めたいという気持ちが先行します。その方法として紹介されているのが「ジャーナリング」と「ラベリング」です。

「ジャーナリング」と「ラベリング」

ジャーナリングとは

今日のできごと、感じたことを思いつくままに文章に書くこと。

ジャーナリング 心理学

シェリル・サンドバーグも、ご主人が亡くなってすぐに開始し、立ち直るのに役立ったと述べています。ずっとやり続ける必要はなく、回復期間だけ行なって、やめていいそうです(シェリル・サンドバーグは5ヶ月実施した)。

ラベリングとは

ネガティブな感情に「ラベル」をつけていくこと。

ラベリング 心理学

ラベルは具体的であればあるほどいい。「最悪な気分だ」のような曖昧なラベルより、「ひとりぼっちでさびしい」のほうが、感情を処理しやすい。感情を言葉に置き換えることで、その感情を「自分がコントロールしている」という感覚が得られるのだ。(『オプションB』より)

「ジャーナリング」も「ラベリング」も特別な道具は必要ありません。一日を振り返るちょっとの時間と紙とペン(あるいはスマートフォン)があればできてしまいます。混乱と興奮を毎日鎮めておけば、明日に持ち越さないで済みます。

成長のマインドセット

『オプションB』を読み進めていくと、自分の人生は自分でコントロールしているという気持ち(コントロール感)を持てるかが、立ち直りの肝だとわかってきます。「能力は生まれつきの才能」と考える人よりも、「能力は後から身につけられる」と考える人の方が、自分の人生に対するコントロール感が強く、「回復する力(レジリエンス)」が高まるそうです。

レジリエントな子どもには、共通点があった。自分の人生をコントロールしているという強い感覚をもっていたのである。自分の運命を支配するのは自分だと信じ、ネガティブなできごとを脅威ではなく、挑戦や好機ととらえていた(『オプションB』より)。

オプションB シェリル・サンドバーグ 成長のマインドセット

『オプションB』には、落ち込みから回復するために、自分自身でできることから、家族や組織、社会といった周囲ができることまで、まとめられています。この本には共著者がいて、シェリル・サンドバーグの友人アダム・グラントが手を貸しています。

アダム・グラントは、心理学者であり、僕は前にTEDトークを見て、知りました。『オプションB』とはまた違うテーマながら、そちらもおすすめです。
アダム・グラント:独創的な人の驚くべき習慣 | TED Talk

おわりに

書籍タイトル『オプションB』の由来となっているのが、つぎの言葉です。

オプションAはもう使えない。なら、オプションBを使い倒そう。
Option A is not available. So let’s just kick the shit out of Option B.

楽観的過ぎず、やけになっている感じもしない不思議なニュアンスを含んでいます。内容にぴったりのコンセプトでした。

他に面白いと感じたのが、シェリル・サンドバーグと彼女が務めるFacebookの関係です。Facebookは、2017年6月にミッション変更を発表しました。

変更前

世界をもっとオープンにし、つなげる。
Making the world more open and connected.

変更後

世界を近づけていく。
Bring the world closer together.

この違いをイメージで表すとつぎのようになります。

Facebook ミッション

離れていたものをつなげるのと、距離自体を縮める。これらは似て非なるものです。

シェリル・サンドバーグが『オプションB』で描くあるべき社会の姿と、Facebookの新しいミッションは共鳴しています。彼女とFacebookの関係は、個人と組織の関係の理想モデルに違いありません。

オプションB シェリル・サンドバーグ

プロフィール

櫻田潤
櫻田 潤(さくらだ・じゅん)

プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナーを経て、2010年よりビジュアルシンキングを運営。あわせて、インフォグラフィックのデザインも始める。2014年、NewsPicksにインフォグラフィック・エディターとして参画。ビジュアルを用いた記事を多数、執筆デザイン。2017年よりNewsPicksのクリエイティブを統括。著書に『たのしい インフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』ほか。